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2025.12.16 update
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    変な地図
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    26 このミステリーがすごい!
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    ¥900
西館6階 くまざわ書店
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向田邦子ベスト・エッセイ
向田邦子/著 向田和子/編 900円 ちくま文庫

向田邦子ベスト・エッセイ

向田邦子が、飛行機事故でこの世を去って、44年が経った。私が彼女の作品に初めて触れたのはつい最近のことである。現在、彼女の名前を本屋で探し回るようになるとは、思わなかった。

彼女の随筆を読んだ時、まさしく電流が流れるような衝撃を受けた。なぜ、こんなに普通の風景を、生活を、みずみずしくそのままの姿で文字にできるのだろう、と。
戦時中、そして戦後の苦難を記す書物はたくさんあるけれど、彼女が書き起こすのはその中にある笑顔だ。空襲で命の終わりを感じ取りながら、同時に食べものや服、靴、畳の汚れなんかを気にする。戦時中でも、面白いものはあったし、声を上げて笑うこともあった。そうした、戦争だけでまわっていない日常があったと知ることが出来て、あたたかいものが胸に残る。

会話から不貞腐れた表情や情けない背中が見える。愛猫の雑誌掲載に浮かれて、手当たり次第に友人に電話をかける向田邦子が見える。
チャーミングで、少し意固地で、ユーモアたっぷりの彼女の文章は、私もこんな風に書けるようになりたい、と憧れる。どれをとっても楽しませてくれるエッセイ集だが、「水羊羹」は、水羊羹評論家を自称する彼女の水羊羹愛が存分に伝わる作品だ。私も夏に、器からこだわって水羊羹と対峙したい。